少年Mの苦悩








最近の習慣。
駅の売店で新聞を買い。
ついでにとなりの自販機で「ユンケル」を購入。
腰に手をあてはしないけど一気飲み。
これで買った新聞の競馬欄でも開こうものなら立派なオッサンであるが。





『抗争勃発か、武田組対上杉組』
『中国系麻薬密売ルートの摘発』





「ふう、物騒な世の中だよね。」
「一高校生にしては若さが足りない行動だぞ、猿飛。」


 どうやら一連の行動を見られていたらしい。
 密かに動揺するがよく考えれば今更なので、開き直る。
「だから補給してるんでしょ。」
 びしりとユンケルを示せば。
「ソレで補給できるのは親父臭さと精力のみだ。本懐でもとげたのか、お前は。」


「!!!!」





 思春期の若人の繊細な神経に様々な意味でぐさりとくる一言である。
 非常にイタイ。
 すべてにおいて痛すぎる。





「・・・・・・・・・・って元就だって買ってるし。しかも俺より高いやつ。」
「あのバカ元親のせいだ。一度焼け焦げよ・・・。」
 ぎらりと某組の誰かを思わせる物騒な発言に、それでも佐助は怯えることなくむいろ対象が自分からかわったことに安堵を覚え、大変だなー、と溜息をついた。

「また喧嘩?今度は何やったの、元親さん・・。」
 以前は確か女関係。その前はパチンコで負け。その前は酒場で乱闘だったか。
 今更その程度で驚かぬわ、と涼しい顔で言い放ちながらも容赦なく制裁を加えていた友人の姿を思いだし。
 さて今度は何事かと首をひねる。

「猿飛。我は、どうしても許せぬ事がある。」
 不意に真顔になった元就に、佐助は飲んでいた二本目のユンケルの瓶をおろした。
「兄弟であること、とか言い出さないでね。」
 以前本人が言っていた通り、それはどうにも出来ない事実なのだから。


「それは『ドラえもんの法則』と思えば致し方ないことだ。」



 
*ドラえもんの法則。つまりは貴重な薬を放置しすぎため、一番重要な成分が沈殿し、先に作られたため上澄み液だった兄ロボットは微妙にへタレで、後につくられた妹ロボットは超絶優秀だったというアレのことであろう。

 
 身も蓋も外見もない言い草である。
 しかしドラ美か、元就。




「なら、何?」
「アレの衣服だ。」






 元親さんの服。
 言われて脳裏を過ぎるのは。
 深紫の眼帯。
 さらし。
 ド派手な紫基調のアロハ系鬼柄シャツ。
 大工さんですかというような地下足袋、ズボン。
 たまに短刀。
 最近オプションで金ネックレスが増えた。
 刺青入り。
 で、体長2m弱。




「・・・・・・・・・・・・・・・もの凄く職業に適した服装だと思うけど。」





 どうあがいても間違いようがなく、由緒正しきチンピラスタイルだと思う。
 昨今はもう少しスタイリッシュになっているのに、そういえば伊達組のたちは非常にオールドファッションだと思う。
 横文字つかって勝鬨の声を上げるにもかかわらず。


「・・・・・・・・・・・・・・・いかにも頭の悪そうなチンピラの格好であろう。まあそれに相違はないのだが、我と並んで歩くときはそのアロハを脱げといったら、『絶対に嫌だ』とぬかしおった。」
 愚か者が、と秀麗な顔に怒りを滲ませ、履き捨てる。
「なにが、俺のポリシーだ、だ。馬鹿者が・・・・。ポリシーで飯が食えるか。」
「いや、あの人たちはポリシーなかったら意味ないから。」
 なにせ意地だの面子たのでまわってる世界だから。





「ていうかさ。あの人と並んで歩く気があるのがすごいと思うよ。」
 アロハ、だけでいいんだね、しかも。





「特攻服までなら許せたのだが・・・・・・・・・・・・。」
「意外と許容量広いんだね。元就。」


















一言。
そういえば初めて書きました、若元就。うちでは常にあの姿で歳は70という長老ですから。
島津の爺様とは最近の若い者と戦国乱世と昔話をかたる茶飲み友達好敵手です。微妙に先輩後輩な感じで。
もちろん元就が先輩だ・・・・。

注:コレはリクではなく、リハビリで書いたものです。